
「自分の子はまだ発語がない。周りの子はたくさん言葉が出てきているのに、見ていて不安。」「発語が遅い場合は自分の育て方に問題があるのかな?」「発語が遅いのは何か病気や障害があるのかもしれない……」
上記のようにお子さんの言葉の遅れについて不安を抱える親は少なからずいらっしゃると思います。
言葉の遅れに悩む反面、「うちの子はきっと大丈夫!」「もうすぐ発語するかもしれない、もう少し待ってみたい」と希望を持ちたい気持ちもあることでしょう。
そこで本記事では、言葉の遅れを判断する目安と原因について説明します。さらに、言葉の遅れの悩みを相談できるところや言葉の遅れを感じたときに親ができることなどについても解説していきます。
言葉の遅れを判断する目安とは?

子どもの言葉は、通常どのような発達の流れをたどるのでしょうか?
言葉の発達が著しい3歳過ぎまでの様子について見てみましょう。
1.0~1歳前後
- 6か月ごろからだんだん「アー」「ウー」「ダー」などの喃語が出る
- 上下の唇を使い「バッブ」「プップー」などの言葉が出る
- 身近な人に話しかけるような声を出すことがある
2.1歳から2歳
- 1歳過ぎには「ママ」「パパ」「わんわん」など意味のある単語が言えるようになる
- 1歳から1歳半くらいの間に理解できる単語が増えてくる
- 2歳前後には語彙も増えて2語文が分かるようになる
3.2歳〜3歳
- ものの名前に興味を持ち「これなに?」などと質問するようになる
- 「まんま、たべた」「ブーブー、きた」などの2語文を話すようになる
4.3歳以上
- 何にでも興味を持ち「どうして」「なぜ」などの疑問が増える
- 「パパかいしゃに行った」といった3語文が言えるようになる
- 友達とものの貸し借りなどのコミュニケーションができるようになる
言葉が遅れる原因とは?

言葉が遅れる原因としては、聴覚障害や言語障害、脳機能の問題などがあげられます。
1.聴覚機能の問題
聴覚機能の問題として、以下のような様子が見られます。
- 乳児期に大きな音に驚いたり不快感を示さない、音の出るおもちゃに反応しない
- 幼児期に話し声が大きい、テレビの音量を上げる
上記のような場合は、言語聴覚士に検査・評価してもらい、早期の治療・リハビリ・療育・手話などに取り組む必要があります。
先天性難聴児は出生数 1000 人当たりに1~2人とされており、早期に発見し、適切な支援を受けることにより、自立した生活を送るために必要な言語・コミュニケーション手段(音声、手話、文字による筆談等を含む。以下同じ。)の獲得につなげることができる。
日頃から子どもの聞こえ具合に注意を向けて、もし不安に感じたらできるだけ早めに医療機関を受診するのが良いでしょう。
2.発達性言語障害
発達性言語障害とは、レイトトーカーや特異的言語発達障害などとも言われます。
特に難聴、知的発達の遅れ、自閉症スペクトラムといった原因がない言語障害です。運動発達や非言語性コミュニケーションは良好で、言語の発達のみに問題があるということが特徴です。
発達性言語障害は、以下の2つに分けられます。
- 表出性言語障害:言葉自体は理解しているが言葉の表出が遅れている
- 受容性言語障害:言葉自体を理解していないことにより言葉の表出も遅れている
3.発達障害や知的障害など脳の機能の問題
2〜3歳になっても言葉が出なかったり、遅れていたりする場合は、知的障害やASD(自閉スペクトラム症)などの発達障害の可能性があります。
障害があるかどうかは、言葉の表出のみでは判断できません。
他者との関係性やコミュニケーション領域の発達にも目を向けることが必要です。
言葉の遅れに関する相談窓口について

発達関連の相談窓口は、ほとんどが医療機関や行政と連携しています。そのため、一か所に相談することで、今必要な診断や支援へつながるようになっています。
相談の前には、子どものコミュニケーションや遊びの様子などをあらかじめメモしておくとよいでしょう。というのも、相談先の医師や専門家が、子どもの発達段階を把握するのに役立ちますし、親も生活の中で取り入れられる工夫や気をつけるべきことについて教えてもらいやすくなるからです。
ここでは、言葉の遅れの相談窓口について主なものを4つあげます。
1.小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来
一番に相談しやすいのは、かかりつけ医の小児科になるでしょう。敷居が低く、地元の専門機関に紹介してくれる場合があります。
そのほか、児童精神科・小児神経科や発達外来を標榜している病院でも受診可能です。
また、発達障害などの診断を受けたい場合には、必ず医療機関を受診しなければなりません。診断がなくても、児童発達支援などのように、医師が必要性を認めた場合に利用できる福祉サービスはありますが、診断に限っては医療機関のみになります。
医療機関を受診するかどうか悩む場合は、医療機関以外の専門機関に相談しましょう。
2.市町村保健センター
乳幼児健診などで発育チェックをして発達の遅れが見られる場合は、検診の後も保健師が定期的に発達の様子をチェックし、相談できます。
療育などが必要となり、受給者証が必要になる場合は、行政の障害福祉課との連携サポートを受けられるでしょう。
3.地域子育て支援センター
地域の子育て支援センターは、気軽に親子同士で交流を深め、子育ての悩みや不安を気軽に相談する場を提供する目的で設置されています。主に就学前までの乳幼児同士が利用でき、親子同士の交流の場です。
交流のためにおもちゃや本などが用意されたプレイルームがあり、絵本の読み聞かせや歌を歌うこともできます。ほかにも、子育ての相談・援助や、子育ての情報提供などもおこなっています。
自治体によっては、子ども家庭センターや子ども家庭支援センターなど名称が異なる場合があるため、その際は各自治体に確認してみてください。
4.児童発達支援センター
児童発達支援センターは、療育支援や保育所等訪問支援などのサービスを提供している施設です。福祉サービスに加えて治療も行う「医療型」もあります。
療育施設は通所型のサービスで、以下のような発話を促すプログラムを提供しています。
- 集団生活に適応していくために必要な技能や知識などの習得
- コミュニケーショントレーニング
また、発話を促すプログラムに合わせて身辺自立のトレーニングも行っています。
保育所等訪問支援が行われるのは、主に以下の施設です。
- 保育園
- 幼稚園
- 認定こども園
- 放課後児童クラブ
- 学校
障害のある子が集団生活でお友達と円滑なコミュニケーションを取るために専門的な支援をしています。
児童発達支援センターと同様の施設として、児童発達支援事業所があります。しかし、児童発達支援センターのほうがより規模が大きく、地域支援なども行っているのが特徴です。
言葉の遅れに関する悩みを持つ親のコミュニティについて

言葉が遅れている子どもがいると不安になり、誰かに相談したくなるかもしれません。そのときにどのようなコミュニティを選ぶとよいかについてまとめました。
1.疎外感を感じやすいコミュニティ
子どもの言葉の遅れを感じると、不安な気持ちから他の子どもの様子と比較したくなることがあるかと思います。その一方で、定型発達の子を持つ親同士の輪に入りづらいと感じることがあるかもしれません。
例えば、自分の子どもはまだ発語がないのに、周りの親が子どもの言葉が上手になってきたことを話しているのを横目で見ていると不安な気持ちになったり、話題が合わないと感じたりすることもあるでしょう。しかし、きょうだいに友だちがいて、友だちの親と仲がいい場合は、理解や助けを得られる場合もあります。
2.同じ悩みを共有できるコミュニティ
自分の心のよりどころとして、話を共有できる関係性を持っておくのはよいことです。このとき大切なのは、自分の話題に合う親とつながることです。
自分と同じ立場の親同士の友人ができれば悩みを共有できます。お互いに体験談を教え合うことで得られる情報も多く、孤独感の軽減につながるでしょう。
とはいえ、コミュニティの情報を集める前に自分が何を求めているかを明確にしておくことは大事です。コミュニティごとに雰囲気などが違うこともあるので、自分に合うところを探すために何カ所かお試しで参加してみるのも良いでしょう。
以下3つのタイプのコミュニティについて解説します。
⑴家族会
- 全国向けや地域向けのコミュニティがある
- 親の会などと言われていたりもする
- 大きな会では有益な情報が得られやすく、専門家の講演会の取り扱いも多い
- 運営は自分も参加しなければならないのでエネルギーがいる
⑵オンラインコミュニティ
- SNSでのグループやインターネット上の掲示板などのオンライン上で情報交換できる
- 時間や場所の制約がない
- 気軽に参加できる
- 近くの人が集まるコミュニティが探しやすい
⑶地域のペアレントトレーニング
- 専門家から直接指導を受けられる
- 同じ地域の保護者とつながりやすい(一人で抱え込むことがなくなることが大きく影響しているとも考えられている)
- 具体的なスキルや対処法を教えてもらえる
言葉の遅れを感じたときに親ができることは?

子どもの言葉の遅れを感じたら、どんな手立てを講じることができるでしょうか?家庭で言葉を促すことにつながる4つの方法と早期に行える対処法について説明します。
1.積極的に話しかける
子どもは周囲の人が話す言葉を聞いて学習していきます。とにかくたくさん話してあげることでだんだん言葉が出るようになります。
子どもが身の回りにあるものや興味を示したものを言葉と結びつけて話してあげるようにすると、子どもは意味のある言葉として使えるようになります。例えば、「わんわんきたね」や「おはなきれいだね」のようにものと言葉が結びつくように話すと効果的です。
2.絵本を読み聞かせる
絵本の読み聞かせは、言葉を覚えるのにとても有効です。始めは文字が読めなくても、子どもは絵で想像して話の内容を理解していきます。また同じ絵本を繰り返し読み聞かせることで、少しずつ言葉と意味が結びつくようになります。
3.先回りして話さない
子どもの様子を見ていると、親の私達は、子どもが何がしたいのかを予測できると思います。しかし、すべてを先回りして「〇〇したいの?」と聞くのは控えましょう。子どもの成長のためには、自分からしたいことや思っていることを言えるようになるのを待つことも大切です。
4.言い間違いを注意しない
子どもは文字数が多い単語や発音の難しい単語を、はじめは言い間違えることも多いものです。やっと言葉を覚えたのに、親が細かく指摘すると子どもにとってはそれがストレスで、話すことが嫌になる可能性があります。成長と共に上手に言えるようになるので、全てを指摘せず温かく見守りましょう。
まとめ

自分の子どもに言葉の遅れがあると、親はどうしても不安や焦りを感じてしまいます。しかし、焦らずに子どものペースに合わせて見守ることが重要です。発話のペースが遅くても、子どもは少しずつ成長しています。長期的な視点でサポートを続けましょう。
不安になったときは、一人で抱え込まず、友人や専門機関に相談しましょう。相談することで負担も軽くなり、何より早期の支援につながります。
早期の支援は困りごとを抱えている子どもにとって非常に有効です。親はアドバイスを受けながら、子どもが持っている能力を最大限に引き出せるよう温かく見守るようにしましょう。
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